なかなか治らない犬の慢性外耳炎、耳の中にできものがあるかもしれません

犬の耳垢腺過形成は、耳の中に存在する耳垢を分泌する腺(耳垢腺)が異常に発達し、通常以上に耳垢が生成される状態です。この異常は、耳垢の蓄積や慢性的な炎症、さらには二次的な感染症を引き起こすことがあり、適切な管理が必要です。

今回は、外耳炎がなかなか治らないとのご相談でした。耳の中を覗いてみるとたくさんの耳垢が堆積していました。
洗浄して再度覗いてみると

耳の中にとても大きいできものがあります。

できものより奥の部分と洗浄と観察が難しいため、全身麻酔下にて摘出と耳洗浄を実施しました。
ビデオオトスコープで確認しながら、特殊な器具を使用してできもの摘出します。
病理検査での結果は、耳垢腺過形成という診断でした。
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猫の斜頸やふらつき:耳の病気が原因かも?鼻咽頭ポリープのお話

夏も近づき、じめじめした梅雨の時期に突入しました。
梅雨の時期は、外耳炎や皮膚病の多くなる時期でもあります。あまりひどくなると治療にも時間がかかるようになります。耳垢や湿疹がでるようになった、痒みや赤みがあるなどの症状が出てきた場合は、早めにご相談くださいね。

今回は『猫の鼻咽頭ポリープ』のお話です。
猫の鼻咽頭ポリープは若齢期に多い非腫瘍性のできものです。
今回は、2ヶ月前より斜めに歩くなり振らつくようになり、その頃から右耳より液体がでるようになり、
CT検査にて外耳炎〜内耳炎があり、鼻咽頭ポリープがあると診断され、オトスコープにより治療が必要だといわれたため来院されたねこちゃんのお話です。CTにて診断されているため、後日麻酔をかけてオトスコープにて検査と治療をさせていただきました。

初診時の写真です。右目も神経麻痺の症状がありうまく開くことができていない状態です。
 

CT検査の写真です。

水平耳道から鼓室にかけての腫瘤と内耳に造影剤による増強が認められています。

検査・治療1日目の写真です。

水平耳道には黒い耳垢が堆積し取り除いていくと奥にボコボコとしたできものが確認できました。

可能な限り、きれいに取り除いていきます。

術後2週間目の写真です。

耳垢の量もだいぶ減り、鼓膜が再生してきました。
摘出したポリープの病理検査の結果では「慢性化膿性炎症」という結果でした。

同時に検査に出していた細菌培養薬剤感受性検査に検査に基づいて抗生剤の投与と耳洗浄を中心に治療していきます。

 治療開始後2ヶ月目

耳垢もほとんど出なくなり、鼓膜もきれいに再生してくれました。
 内耳まで炎症が波及していたこともあり斜頸の症状は後遺症として残ってしまいましたが、日常の生活には支障のない程度まで回復してくれました。
開かなかった右目の麻痺は改善しもきれいに開いてくれました^^

 

『猫の鼻咽頭ポリープ』は、猫の若齢期に多い炎症性のポリープです。
発生する原因は不明ですが、先天性・ウィルス感染や中耳や上部気道における慢性炎症の結果に生じている可能性も考えられています。
犬は発生は稀ですが、鼻腔にポリープ形成が報告されています。
耳から鼻の広範囲にかけて病変がある場合があるため、
CTやMRI検査にて病変部位を確認し、病理検査での診断が必要になります。
治療としては、外科的に切除しながら、内科的に抗生剤の投与により治療します。

抗生剤の投与のみによる治療は、若干炎症が引いてはくれても臨床症状の改善はあまり期待できない場合が多いです。内耳まで病変が波及すると、ふらつきや斜頸など神経症状まで出現します。炎症が治っても今回のケースのように後遺症が残る場合もあります。猫の耳の病気はできるだけこじれないように治療することをお勧めします。

こんな症状がみられたらご注意を!※
鼻の病気の症状に似ています。

鼻水がでる
喘鳴音(ヒューヒュー、ゼィゼィした呼吸)をするようになった
くしゃみや逆くしゃみをするようになった
頭を振る
耳漏
首を傾ける(斜頸)
□ 旋回やふらつき(ぐるぐるまわる)
□ 眼振や瞳孔の左右差(ホルネル症候群)
□ 顔面神経麻痺

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※歯科相談・耳の病気や腹腔鏡手術などのご相談は、しっかりと説明・ご納得できるようになるべく長い時間をとるように初診時に努めていいます。
 どうしても土日は、診療頭数が多いため説明やご相談の時間が取れない場合も多いです。 
  ご納得の上、検査や治療を受けれるように平日のご予約をお勧めします。
 また、症状がこじれたり重症化すると治療期間も長くかかってしまいます。
 症状がひどくなる前にお早めのご相談をお勧めします。

 

 


2.犬や猫の鼓膜のおはなし

今回は、耳の内視鏡「鼓膜について」のお話です。厳密にいうと、水平耳道から鼓膜までの構造や特徴についてのお話になります。

外耳炎の時に行われる耳鏡やVOS(ビデオトスコープ)による検査は、耳の入り口から鼓膜までの耳垢の性状や、耳道の状態、鼓膜はどうなっているか?までを観察しています。
特に鼓膜付近の観察は外耳炎の治療にはとても大切な場所です。
鼓膜は、外耳と中耳を隔てる膜のことで、音を振動に変えて内耳に伝える役目をしています。
鼓膜は、上の図の白っぽく見える鼓膜弛緩部と下の半透明の鼓膜緊張部で構成されています。
VOS(ビデオオトスコープ)検査(下の写真(写真左))で見るとこんな感じに見えます。

耳道と鼓膜の付着しているあたりからは、耳毛(写真右)が生えていて耳毛の多い犬種などは耳垢が絡んでしまい耳垢の排出がうまくできずに外耳炎のおこす一因であると言われています。
■耳の部位別の役割
外耳は、音を集音して鼓膜で音を振動に変換をします。
中耳は、音の増幅と耳の防御や排水、換気などの役目をしています。
内耳は、音の振動を神経刺激への変換と旋回の認知、重力を脳に伝える役目をしています。
外耳炎の治療を行う場合は、この鼓膜付近の状態を観察しながら現在どういう状態なのかを耳鏡検査で確認して治療を組み立てていきます。水平耳道(A)は、頭蓋骨に侵入する部分でやや凹んだ構造をしており、この部分が耳垢が堆積しやすい構造をしています。水平耳道と鼓膜の接合する部分(B)も、V字状に少し窪んだ構造をしているため、このAとBの部分に耳垢が堆積してしまい外耳炎がなかなか治らない場合が多いと言われています。また、水平耳道のこの凹んだ部分(A)から、耳毛が生えているため耳毛の多い犬種などは耳毛と耳垢が絡んでしまい外耳炎の慢性化の起因となるとも考えられます。

耳道の構造に特徴のある犬種もいます。パグは一般的な犬種に比べて耳道が狭く、フレンチブルドッグは縦長の構造をしているため耳の病気が多い犬種です。パグもフレンチブルドッグも外毛が硬いため、耳の中に落下した外毛が鼓膜に刺さった状態で観察されこれが痛みや痒み、炎症の原因になっていることもあります。
そして、 慢性外耳炎や再発を頻繁に繰り返していると、脂腺や耳垢腺の過形成などの炎症が慢性化し改善できていないサインが見られる場合があります。改善されない原因は先天的なもの(脂漏犬種、耳毛など)・後天的なもの(内分泌、腫瘍、環境など)など様々な原因があるため、その原因を突き詰めながらなるべく良い状態に改善できるように治療を考えていきます。

鼓膜付近に異常のあった子の例
●1−2ヶ月程前より、耳を痒がっているという子です。


VOSで耳道内を検査したところ、腺の過形成と耳道の狭くなった部分に耳毛を絡めて巨大な耳垢が存在しました。耳道洗浄で巨大な耳垢除去しましたが、鼓膜弛緩部が腫れていました。

●耳垢により鼓膜穿孔の見られていた子
この子も鼓膜の手前に巨大な耳垢が詰まっていました。経過が長かったと思われます。摘出後、鼓膜穿孔が見つかりました。

●真珠腫性中耳炎をおこしていた子

鼓膜が丸く隆起しています。時間はかかりましたが、治療により改善してくれました。

耳洗浄や耳掃除と点耳液や飲み薬を処方されたが、なかなか改善されない場合は、耳の奥に問題がある場合が多いです。
ビデオオトスコープでの耳の検査は、今まで見れなかった所を精細に診ることができます。耳の奥に問題があるときは、原因を除去することによりだいぶ落ち着いてくる場合が多いです。
犬や猫の外耳炎がなかなか治らない場合には、一度観察することも良いかもしれませんね。

〜〜〜こんな症状がみられたら、お早めに相談を!〜〜〜
□耳が痒い
□耳を擦り付けている
□耳が臭い
□耳垢が多い
□耳が赤い
□耳の周りが、脱毛や毛玉がある
□慢性外耳炎と言われている
□洗浄液や点耳液を常備している

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犬の慢性外耳炎:適切な治療とケアでここまで落ち着きます。

慢性外耳炎と診断され、かゆみや再発を繰り返していたり、点耳薬を常備薬として処方されているオーナー様は意外と多いのではないでしょうか?

今回は、慢性外耳炎と診断されたわんちゃんのお話です。
慢性外耳炎と診断され、点耳薬を処方されていたが再発を繰り返しているという相談でした。耳の洗浄後、耳の奥をのぞいていくと耳道の中が黒っぽくぷつぷつと耳垢腺が腫れていて耳道も狭くなっています。鼓膜周辺も、耳垢がびっちりと詰まってました。
治療方針を説明して定期的に通院してもらいながら、その子その子にあった治療を実施していきます。
治療後の写真
耳道内の耳垢腺の腫れもなくなり、耳道も広くなりました。鼓膜もきれいに観察することができるようになりとても良い状態になりました。
今後は、定期的に観察させていただき徐々に通院間隔を伸ばしていきます。
犬の外耳炎はいったんこじれてしまうと、通院回数もおおくなり、長期間治療するケースも多いです。また、慢性的に痒みや痛みを感じているため、治療を嫌がるようになってきます。できるだけ、早期に発見ししっかりと落ち着かせることがとても大切です。

〜〜〜こんな症状がみられたら、お早めに相談を!〜〜〜
□耳が痒い
□耳を擦り付けている
□耳が臭い
□耳垢が多い
□耳が赤い
□耳の周りが、脱毛や毛玉がある
□慢性外耳炎と言われている
□洗浄液や点耳液を常備している

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治らない犬の外耳炎:異物(ノギ)かもしれません。

散歩後に急に耳を掻くようになり、病院で点耳薬や薬を処方されたがなかなか改善しない。
そんな場合は、耳の中に異物が入っているかもしれません。
特に、イネ科の雑草「ノギの実」が悪さをしている場合が多いです。

今回の子も、散歩後に急に耳を気にするようになり、点耳薬や薬を処方されているがなかなか治らないとこのことで来院されました。

耳鏡で覗いてみると、
鼓膜に毛より何か太いものが刺さっているような感じです。
鼓膜に当たっているため、痛みを感じ気にしているようです。

オーナー様に異物の可能性を説明し後日、全身麻酔下にて摘出しました。

摘出後
右耳には4個、左耳に1個の異物を摘出しました。
散歩中に草むらで遊んでいる時に、ノギの実が耳の中に入り込んでしまったようです。
摘出後は、耳の痒がる症状はすぐに治りました。

散歩後などに、急に耳を痛がる(痒がる)、気にする、頭を傾けるなどの症状が見られた場合は、こういったケースが多いです。
また、耳だけではなく目や鼻の中に入ってしまうケースも経験があります。
草むら大好きなワンちゃんを散歩させる時は、要注意です!